【新版 外反母趾を防ぐ・治す 井口 傑(いのくち すぐる)著】を読んでみました。

【新版 外反母趾を防ぐ・治す 井口 傑(いのくち すぐる)著】を読んでみました。

本書は、2001年に刊行された【外反母趾を防ぐ・治す】に加筆訂正をし、2007年に出版されたものです。そうです、ある程度、古い本と言えます。医学の進歩は目覚ましいと言われているのに、私はどうして古い本を手に取ったのか?それは、古い本を読めば、治療方法などがいかに進んだか、が分かるからです。

著者の井口 傑先生は、出版当時は慶應義塾大学医学部総合医科学研究センター・整形外科 教授であり、『日本靴医学会 理事』でおられました。2015年現在では、文化学園大学特任教授であり、東京都調布市の『うさみ整形外科』で月に2回、東京都済生会中央病院でも月に1回、外来を担当されています。

本書は、読み進めていくと、「そこはちょっと違うんじゃ…」とか「今は、そういう風には考えられていないよね。」などと、素人の私でも突っ込みを入れたくなるところがぼちぼち出てきます。例えば、ウォーキングについてですが、『外反母趾だけのことを考えれば、ある程度進行した外反母趾の患者さんにすすめられる運動ではありません。』と書かれています。

また『外反母趾が進むと、親指以外の指も外側に曲がり、脱臼したり、槌指(ハンマートウのこと)になったりします。それどころか、足全体が扁平足や開張足になり、足の裏や小指の方まで痛みが広がってしまいます。』とありますが、現在では、開張足から外反母趾に移行してしまう、という考え方が主流のようです。

そうは言っても、本書には、是非読むべきポイントがいくつも有るんですよ。長年にわたり、大学病院の『足の外科』外来で、多くの外反母趾の患者さんと向かってきた井口先生ならではの「整形外科の受診のしかた」が、まずひとつ目のポイントです。

4章の『外反母趾を治す』に詳しく書かれていますが、整形外科医といっても、みんながみんな外反母趾のスペシャリストではないこと。では、どうやって医師を選んだら良いのか。あるいは、初診のときに、どのように医師に自分の症状を伝えれば良いのか。あなたにも、身に覚えがあると思いますが、お医者様から『どこが痛いのですか?』には、足の親指のつけねが痛みます、とこたえられても、『いつからですか?』と訊かれると、返答につまってしまい、え~(汗)いつからでしたっけ?ずっと前からです、のように、大ざっぱな答えになってしまうこと、ありますよね。

井口先生いわく『「二、三ヵ月前、新しいハイヒールに替えてから、靴をはいて長時間歩くと足の親指のつけねにいつも痛みを感じるようになったので、かかりつけのお医者さんに診ていただいたら、整形外科に行きなさいといわれてきました。レントゲンは撮っていません」と10秒で答えてくれる患者さんが現れないかと夢見ています。』

ただし、紙に書いたものを持参して読むのは、まずいそうですよ。『レポート用紙にぎっしりと書き込んだものを見せられると、医者が消化不良を起こしてうんざりするのがおちですし、ペーパーマニアといってノイローゼの症状と誤解されかねません。』なるほど!暗記してきたように、ぺらぺら話すよりは、先生との一問一答に、簡潔にてきぱきこたえた方が良いのですね。そして何より肝心なのは、一番治して欲しいこと、つまり主訴を明確に伝えることだそうです。痛みを取って欲しいのか、スポーツをしたいのか、ハイヒールを再びはけるようにしたいのか、自分の思いを伝えましょう。

そして、本書のふたつ目のポイントは、9章『手術で治す』です。驚きました!手術の前から費用、入院期間や手術を受けるのは片足ずつが良いのか、それとも両足いっぺんに受ける方が良いのか。すぐに入浴できるのか。仕事やスポーツにはいつ頃復帰できるのか。退院してから、どのように過ごせば良いのか。など、あらゆる疑問が、この章を読めばクリアになること間違いなしです。

細かい話ですが、術後すぐにはく履き物や、麻酔の種類にも言及されていますし、できるだけ、手術は最後の最後の手段にしたほうが良いことや、手術後の合併症のことにもふれられています。なるほどなと思ったのが、『「痛い思いをして手術を受けたのだから、前より丈夫な足になるはずだ」と考える患者さんが少なくありません。胃潰瘍の手術で、前より胃が丈夫になると考える患者さんはいないのに』という一文です。

確かにその通りですよね。手術で親指が真っ直ぐになったからといって、全ての問題が解決したと考えるのは、安直過ぎますよね。外反母趾の原因は、私のように、体中の関節がやわらかくてよく動き、足も薄くてぺっちゃんこ、といった骨格、体つき、さらには遺伝も関係していますから、手術後に、いきなりハイヒールをはくなんて、もってのほか、ということですよね。

外反母趾の、どうしようもない痛みに悩んでいるあなた、手術を考えるならば、まずは本書をお読みになることをお勧めします!