【人生を楽しくする 大人の女の靴選び 呉本 昌時 著】を読んでみました。

【人生を楽しくする 大人の女の靴選び 呉本 昌時 著】を読んでみました。

靴屋さんのショーウィンドウって、何であんなに綺麗なんでしょう?特に冬、自分がまだ厚手のコートを羽織っているときに、靴屋さんのウィンドウの中は、お花畑のように色とりどりで鮮やか。洋服店のウィンドウよりも、季節感を先取りしているように思えることもあります。あゝ、あんなに軽やかでカラフルなパンプスが履けたら良いのに…と涙を飲むのは、私だけではないはず。私の場合、お財布と相談しなければならないのはもちろんですが(悲)何よりも、外反母趾である、この足と相談しなければならないからです。これが難しい!
今回、私が選んだのは、お医者さんでも接骨院の方でもなく、高級婦人靴メーカー 株式会社サロンドグレーの代表取締役、呉本 昌時さんの著書です。サロンドグレー、私は本書で初めて知りましたが、日本製ハンドメイドにこだわり、機能性とデザインが両立した「軽くて柔らかい靴」をコンセプトにしているのだそうです。呉本さんご自身も、シューフィッターの資格をお持ちとか。これは期待できそうです!

呉本さんのポリシーは、「ラクでオシャレな靴」を提供すること。「ラク」だけだったら、ひも靴のコンフォートシューズが何よりかもしれません。でもそれでは「オシャレ」じゃない。本書のタイトルは「人生を楽しくする」ですよ。呉本さんは『「デザインを犠牲にしない履きやすい靴」という選択肢はあります。』と言い切っています。何と頼もしいひと言でしょうか!

まずは、私たちが陥りやすい、靴選びのときの間違いからスタートです。私たち誰もが、「私の靴のサイズは23センチだから」「ワイズは3Eです」と、自分のサイズは把握していますよね。私も、だいたい「24.5センチのワイズはE」と言って、店員さんに倉庫から出してきてもらいます(このサイズが店頭にあることは、ほぼ無いので)。でも、その決めつけが良くない、と呉本さんは言います。木型はメーカーによって違うというのは知っていましたが、驚いたのが『ワイズ(幅)も明確な業界基準がないため、メーカーによってバラバラです。』ということ!…そうなの!?業界基準、作ろうよ!と思いませんか?こういう点から考えても、日本は、まだまだ靴文化においては発展途上なんですね。ですから、サイズはあくまでも目安に過ぎず、靴を購入するときは、とにかく試し履き、これに尽きるそうです。

また、『外反母趾でお悩みの方は、横アーチが下がっている傾向がみられます。~横アーチが崩れると、歩く際の衝撃を和らげるクッションの役割が低下すると同時に、中足骨(指の付け根の骨)が地面に当たりやすくなります。その状態で底の薄い靴を履くと、地面の衝撃が骨に直接伝わり、痛みを生じてしまうのです。』ということ。なるほど、外反母趾の人は、靴の底にも目を向けて選ぶ必要があるのですね。

さて、あなたも経験があると思いますが、私は外反母趾なんですよね、とシューフィッターさんに相談すると、ほぼ100%、ひも靴を勧められます。これには理由があって、呉本さんいわく『シューフィッターの資格の取得講座に行くと、紐靴が足の健康に一番いいと教えられるので、その教えを忠実に守られているのでしょう。』はい、深く納得です。

では、呉本さんが考える、足やからだにとって、最も危険な靴とは何だと思いますか?私は、ピンヒールやミュールを想像しましたが、答えは「厚底ブーツ」。1990年代後半に大流行し、2015年にも、厚底は、ブーツだけではなく、サンダルなどで再度ブレイクしていますが、『正直、あれほど危険な靴も珍しいのではないかと思います。』とのことですよ!厚底ブーツは、底材が厚いため、まったく曲がりません。となると、踵からつま先まで重心を移動しつつローリングし、足裏の筋肉を使う、正しい歩行ができません。加えて、厚みが15センチなど非常に高いので、不安定です。底の返りがなく不安定、いうなれば『慣れないスケートをしているような格好』を続けていると、健康障害を引き起こしてしまうそうです。外反母趾のあなた、いくら流行だからといって、安易に厚底の靴に手を出してはダメですよ。文字通り、痛い目に遭います。

では、バランスのいい靴かどうかを、プロはどのように見分けるのでしょうか?『まず平な台の上にヒールの靴を置きます。次に、靴を右か左にすこしずらし、手を離します。そのとき、センターを中心に左右均等に揺れた場合、ヒールのバランスがとれています。』これは良いことを教えてもらいました。靴購入時に、試してみたいです。

この他にも、靴メーカー社長であり、シューフィッターでもある呉本さんならではの目線で、靴の選び方のコツが数多く語られていますので、興味のある方は是非!

また、靴の材料、製造工程についても、ページが割かれていて、私が納得したのが、『革はおしり、お腹、背中で伸び方が違います。~親指や小指の当たる靴のウエスト部の革は、伸びた方がいい部分です。』というところです。革と言っても、場所によって伸び方が違うんですね。呉本さんのように、外反母趾で痛みのでやすいところには、革のよく伸びる部分を使ってくれれば、私たちの苦労もだいぶ減るのでしょうが、工場で大量生産されているような靴には望めないそうです(泣)

本書で靴選びと靴メーカーの内輪の話を知ることができたあなた、次に買う靴は、お蔵入りにならず、10年は活躍してくれるはずです。